経営者と社員の羅針盤となる
ミッションをつくるには?
元スタバCEOとともに歩んだミッション策定の道

石田貢 × 岩田松雄  対談

フレイ・スリーのミッションは「想像力を活かして、世界中に喜びがあふれるようにする」。ミッションは経営だけでなく、社員一人ひとりにとっても、なぜ働くのか、何を成し遂げたいのかを指し示す羅針盤。このミッションについて、じっくりと吟味したことはありますか。2016年12月よりフレイ・スリーのアドバイザーを務めている岩田松雄氏は、その経営手腕を買われ、スターバックスをはじめ数々の企業ブランドを再生させてきた人物。フレイ・スリーのミッションはどのように作られ、どんな想いが込められているのか、代表・石田とアドバイザー・岩田氏の対談を通してご紹介します。

岩田 松雄

株式会社フレイ・スリー アドバイザー リーダーシップコンサルティング代表。

大阪大学経済学部卒業後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校アンダーソン マネジメントスクールMBA取得。日産自動車(株)、ジェミニ・コンサルティ ング・ジャパンを経て、コカ・コーラビバレッジサービス(株) 常務執行役員 に就任。その後、 (株)アトラス代表取締役社⻑、(株)タカラ取締役常務執行役 員、 (株)イオンフォレスト代表取締役社⻑、スターバックスコーヒージャパ ン(株)最高経営責任者と歴任。 2011年 リーダーシップコンサルティングイングを設立。2016年12月、株式会社フレイ・スリーアドバイザーに就任。立教大学ビジネスデザイン科 特任教授。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師。

石田貢

株式会社フレイ・スリー 代表取締役CEO

1977年金沢市生まれ。 (株)フレイ・スリー代表取締役CEO。デジタル広告黎明期にキャリアをスタートし、大手企業サイトを多数立ち上げた後、ピラミッドフィルムグループにて映像・3DCGを活用したブランディング、デジタル広告キャンペーンのクリエイティブを展開。国内外の広告賞を多数受賞し、2012年にフレイ・スリーを設立。スマートデバイスとソーシャル領域を中心に、クリエイティブバックボーンを生かしたデジタル広告ソリューション、サービスの企画開発を行っている。

「私が考えるミッションはミスチルの曲に入ってる」。そんな会話から始まった

石田
岩田さんに出会ったのは2016年の10月でした。岩田さんが主催しているコミュニティ「リーダーシップスクール」の月例会に、知人の紹介でゲストとして参加させてもらったんです。
岩田
そうそう。そのあとすぐに、Facebookのメッセンジャーでやりとりをするようになりましたね。
石田
当時、フレイ・スリーはもともと、テレビCMなどの映像制作を手がける会社のグループ会社で、そこから独立しようという時期でした。 それまでは30年、40年と続いている会社の傘下にいましたが、いざ独り立ちしようというときに、やはり会社としてしっかりした軸足を作らないといけないなと思ったんです。
   
そんなタイミングで岩田さんの『ミッション』という著書を読んで感銘を受けて、すぐに会いに行ったんです。最初に話をしたときをすごく覚えているのですが、岩田さんが“ミスチルとミッション”の話をしていたんですよね。
岩田
実は、ミスチルの『彩り』は私のテーマ曲なんですよ(笑)。 「僕のした単純作業が回り回って 出会ったこともない人の笑い声を作ってゆく」というような歌詞があるのですが、これってまさにミッションのことを歌っているのだなと。 たとえばスターバックスのミッションは「人々の心を豊かで活力あるものする」です。お客様がお店でコーヒーを飲んで、ホッとした気持ちになる。その時スターバックスのミッションが達成されるのです。この歌は自動車関連の部品工場で働いている友人のために作られた歌ですが、彼は、直接最終的なお客様に接しているわけではありません。でもその部品が組み立てられて自動車になり、その車に乗った家族がどこかにお出かけして大きな笑顔で楽しんでいる。ミッションが達成した瞬間に立ち会うことはなくても、必ず目の前の仕事がどこかの誰かの役に立っている。 フレイ・スリーだったら、動画コミュニケケーションを通じて、誰かの笑顔をつくるのに役立っているはずです。もしそうでなければ、フレイ・スリーの存在理由はないのです。そのようなお話をしました。
石田
岩田さんが『ミッション』を書いたのが2012年。フレイ・スリーも2012年8月に設立しました。ちょうど世の中の流れとしても、経営者も社員一人ひとりも、もっとミッションを大事にしていかなきゃいけないんじゃないかという気運が高まっていたように思います。
岩田
ベンチャー企業でよくあるのは、会社がだんだん大きくなってきて、20人、30人とある程度の規模になったときに、方向性がバラバラになってミッションの必要性を社長が痛感することです。でもフレイ・スリーはまだ社員数名の段階だった。石田さんはずいぶん早い段階でミッションの重要性に気づいているなと思いましたね。また石田さんの人柄も私が石田さんを応援するひとつの動機です。

企業が生活者に嘘をつけない時代。ミッションの愚直な体現がブランドをつくる

石田
僕は長年テレビCMからWeb動画まで、動画マーケティングにかかわってきました。そんな中、大きな潮目の変化を感じたのは、2011年の東日本大震災のころです。
   
テレビCM自粛の動きもありましたが、これまでのような大量生産を支援するマスコミュニケーションそのものについて、これからも同じやりかたでいいのかという議論が活発になってきました。
   
一方で、スマートフォンやSNSの発達によって、個人の情報発信も大きく伸びてきた。そういう過渡期のなかで、じゃあ会社ってなんのために事業をしていくのかということを改めて問われることになってきたんです。
岩田
それはまさにミッションの再確認ですよね。「企業は世の中をよくするためにある」というのが私の持論です。
   
ある時期、欧米式の経営が流行って、日本でも「企業は株主のためのものだ」という考えが席巻したことがありました。そこで株価重視の短期利益が重視されるようになったのです。 でもその大きな動きのあとは揺り戻しが来ました。もともと企業にとって利益を出すことは、手段であって目的ではない。「企業は世の中を良くするためにある」と思うのです。
石田
特にインターネットビジネスは流行り廃りが激しくて、ともすれば利益重視に傾きがちです。「これからこれが流行るからやろう」というノリの企業もありますが、それも2年、3年という短いサイクルで変わっていってしまいます。 フレイ・スリーがやっていきたいことは、そこではない。そこで、企業として永続的に活動していくためのミッションが必要だと思いました。
岩田
今の世の中は、嘘がつけない時代になってきています。いくら広告できれいなモデルを使い、言葉を飾っても、実際にサービスや商品を体験したユーザーが「全然違うじゃないか」と感じ、SNSで呟かれたらそのブランドは一気に毀損されてしまいます。
   
そこでやはり大切なのはミッションなのです。自分たちのミッションを愚直に体現し、本物の価値を提供していくことで、それがお客様からの信頼となってブランドがつくられていく。そういう意味でも、きちんとミッションを定めて本質的な価値で勝負をしていく時代になってきているのです。
石田
昨年も、海外の有名なアパレルメーカーのデザイナーがつぶやいた一言によって、1日で中国という巨大市場から撤退する結果になってしまった事例がありました。
   
個人個人の共感が、今までにない影響力をもつ時代になってきています。今まで大企業は、認知をとるために効率の良かったテレビCMを投下してきたわけなんですが、認知されてもその後の行動いかんですべてが台無しになる時代です。
   
そういう意味でも、お客さんにしっかり向き合ってその成功を最後までフォローしていく姿勢が大切になってきます。それをミッションという確固たる方針をもって取り組まないといけないなと思いました。

社長一人が決めるんじゃない。社員全員で3ヶ月間、話し合ってつくりあげたミッション

石田
ミッションをきっちり定めようと決意して、次にやったことは、スタッフ全員で議論することでした。社長だけが言っていて社内に定着しない、というよくあるパターンになってしまうのは避けたかったので。ふだんの業務も忙しいんですが、まとまった時間をとって話したかったので、毎週1回、朝7時に集まってディスカッションしました。
   
フレイ・スリーという社名は「フレー!フレー!フレー!」という応援のフレーズから名付けました。いろんな方を応援していくことによって喜びあふれる未来にしていきたいという想いについて、それはどういうことなんだろう、今やっている業務とどうリンクするんだろう、と突き詰めていきました。
   
3ヶ月毎週続けて、少しずつカタチにしていったんです。
岩田
すべての企業のミッションは「世の中をよくするためにある」ことからきています。企業の存在理由(=ミッション)は、世の中をよくしていくことだからです。あとの表現の仕方が企業によって違っているだけです。どんなミッションにするかは、社長や社員の思いがとても大切です。
石田
「想像力を活かして、世界中に喜びがあふれるようにする」という今のミッションが決まったあとは、ではそれをどう事業に落とし込んでいくかというバリュー、つまり優先順位を決めていきました。
岩田
バリューという言葉は非常に分かりにくい言葉ですが、日本語でいうと「行動規範」のことです。ミッションは自分たちの存在理由。そして、5年10年後のこういう姿になりたいという未来像がビジョンです。そして、その過程で何を大切にしていくかというのが、バリュー、つまり行動規範です。 「スピード持っていきましょう」「新しいことに常にチャレンジしましょう」「人を大切にしましょう」といった、行動のルールのことです。どういうことを大切にして、目的地(ビジョン)にたどり着くのかーー、ということです。
石田
私たちのミッションは「想像力を活かしていく」ところにあるので、難しい課題にチャレンジしていく「挑戦」が大事だろう……などと、優先順位を決めていきました。そのなかで私たちが大切にしたいと思ったのは、私たちのサービスを使って生み出されたものがエンドユーザーに届いたときに、彼らが喜ぶようなものになっていなければならないということです。
   
私たちのサービス「1ROLL」はBtoBtoCのサービスですが、たとえば目先のお客さんだけ喜べばいいという視点でサービスをつくってしまうと、まったく必要のない情報が大量に受け手に届くようなものになってしまう事態にもなりかねません。そこはやはり、導入する企業もエンドユーザーも喜ぶかたちにしようとバリューの上位に入れました。
岩田
製薬企業を例に出すと、わかりやすいと思います。患者さんの薬は、お医者さんが指定します。つまり購買意思決定者は、お医者さんです。でも実際に、薬の代金を支払い薬を使用するのは、その先の患者さん。製薬企業は、その患者さんの病気が治癒し、笑顔になることを意識してつくらないといけない。それと同じだと思います。
石田
お客さんの笑顔を大事にしないと、そもそもなんのためにビジネスやってるのかわからなくなってしまいます。売れればいいかというとそれだけじゃない。やっぱりお客さんの笑顔がいちばん大事なんですよね。

ミッションは同じ志を持つ人に集ってもらうための磁石になる

石田
最近ではスタートアップやベンチャー企業でも、「ミッションビジョンが大事だよね」と言われるようになっています。僕は小さなベンチャーだからこそ、なんとなくの言葉で紡ぐのではなく、きちんとミッションを定めていかないといけないんじゃないかと思うんです。そういう意図もあって、かなり創業初期からミッションを突き詰めて考えていきました。
岩田
新たな人を採用するときにも、やはりミッションに共鳴した人に入ってもらいたいですね。共鳴がないと、入社しても、結局お互い価値観が合わなくて辞めていくことになります。それが多くの社長の悩みでもあるわけです。
   
ミッションは、創業者が普通作りますが、社員みんなで作るのも良いと思います。ミッションの作成に自分も関与したことで、ミッションに対してコミットメントが持てます。通常業務ではピンとこない部分もあるかもしれませんが、いろいろな重要な意思決定の局面で、その判断となる拠り所として、ミッションがあって良かったと必ず思うはずです。いくら儲かるからと言って、ミッションに合わないことはやってはいけないのです。
石田
流れの速いITの世界にいると、シフトチェンジしないといけないタイミングや、新しく何かをはじめなければいけないことも、よくあります。そういうときに、ミッションという拠り所があると判断の助けになります。
   
たとえば今だとVTuberが流行っていますが、ある程度ビジネスになるとして、うちがそれをやる意義はあるか、ミッションに照らし合わせて考えればいい。今、事業を進めていくにあたって、ミッションがすごくよく機能していると思います。
岩田
ミッションは存在理由ですから、そう簡単に変わるものではないけれど、バリュー(行動指針)は成長段階によって変わっても良いと思います。ベンチャー初期はスピードが大切だけど、次のフェーズではスピードよりも信頼性を重視する必要があるかもしれません。 フレイ・スリーはミッションに沿って、これからスピードを持って大きく成長していく段階。2018年5月に資金調達も実現して、燃料を満タンにした飛行機が今まさに滑走路に出てテイクオフしていこうというところです。今この会社に参画するのは、面白いと思いますよ。
石田
今は挑戦しなきゃいけない時期だと思ってるんです。この10〜20年のあいだ、GoogleやFacebook、最近では中国からTikTokなどが入ってきていますが、日本では何ひとつ世界で普及するサービスを生み出せていません。僕はそこに危機感を持っています。僕たちが得意なところで、情熱をもって世界にも通用するようなものを生み出さないといけない。 そのためには軸足もしっかりしていなきゃいけないし、それに共感して一緒に取り組んでいく人も集めないと。周りの人に喜んでほしい、今ある壁を壊して新しいチャレンジをしていきたい。そういう人とぜひ一緒に働きたいです。
岩田
経営は「人がすべて」です。ベンチャー企業といえども、しっかりとしたミッションを持っていることがとても大切なんです。優秀な人が集まってくる磁石になりますから。これから入ってくる人は、可能性に溢れたフレイ・スリーで、自分自身を大きく成長させていくことができると思います。
   
フレイ・スリーの事業は動画が核ですが、そこにいろいろな要素が融合して新しいものが生まれていきます。フレイ・スリーのミッションに共鳴し、自分の可能性をもっと伸ばしたいという人が集まってきてくれたらとても嬉しく思います。

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